書籍レビュー: 実務寄りでバランスの取れた入門書『躁うつ病はここまでわかった 第2版』 編:加藤忠史
★★★★★
ここのところ仕事が詰まっていて時間が取れませんでしたが何とか読めました。
躁うつ病の簡単なイントロから薬物、治療法、体験記とQ&Aからなる躁うつ病の入門書です。編者の加藤先生が書いている「躁うつ病の原因はどこまでわかったか」「躁うつ病Q&A」は特に充実しており読みごたえがあります。
時間がないので印象に残った点だけ簡単に書いておきます。
・躁うつ病はうつ状態の方がきつい、一般的なうつ病と比べても症状は急性で自殺企図率も2倍ある。単極のうつ病と誤診されやすく、抗うつ薬を投与すると躁状態が過剰になって危ない。
・患者は母親の期待に応えようと「いい子」を演じていることが多い、母親は概して過干渉。
・加藤先生の説では、ミトコンドリアのDNA欠失(後天)によるカルシウム濃度のコントロール不全が原因なんじゃね?とのこと。2012年時点で、徐々に浸透してきている考え方らしい。
・加藤先生は年に4回以上の周期がある「ラピッドサイクリング」患者を診ていた経験から、我々の脳にはもともとうつ状態なら気分を上げる、躁状態なら気分を下げる神経の機能が脳に存在し、これが弱ると躁うつ病になるのでは、という仮説を立てている。納得できる。
・敷島カエルさんの闘病体験期では「気分の波がなくなることはないが、激しい波をさざ波にすることはできる」と述べていらっしゃる。さざ波、というのはいい表現だと思った。
・進化論的に見ると、季節性の躁うつ病は冬に長く寝て過ごすことができ、春には躁になって食料を確保できるという点で病気のない人よりも適応したのではないか、という面白い考え方もある。
以上です。今後はもっとたくさん本を読んでいこうと思います