六帖のかたすみ

DVを受けていた男性。家を脱出して二周目の人生を生きています。自閉症スペクトラム(受動型)です。http://rokujo.org/ に引っ越しました。

書籍レビュー:実体部分にくわしいネットワーク書『ネットワークエンジニアの教科書』 著:シスコシステムズ合同会社テクニカルアシスタンスセンター

★★★★☆

 

自分がネットワークの最新技術に疎いためネットワーク関連のニュースを読んでもどうも実感がわかないことと、さくらインターネットなどデータセンターやクラウドを取り扱う会社が中で何やってるのか興味があったので読みました。

広く浅く

「意外と幅広いネットワークエンジニアの業務と必須スキルを網羅!」という謳い文句通り、インターネットプロトコルの基本であるTCP/IPからイーサネット、ルーティングプロトコル、スイッチ・ルータ、セキュリティに無線LAN、データセンターや実際の保守作業までめちゃんこ幅広い分野について解説があります。

幅広すぎて項目ごとの解説が通り一遍になってしまっている欠点はありますが、あまり詳しすぎても混乱するだけなので仕方ないと割り切ることが必要です。

電波の解説が面白い

本書はシスコの中の人たちが書いてることもあって、論理面よりも物理面の解説が優れていると感じました。

例えば6章の無線LANについての説明では、まず「『波』としての電波の2つの性質」というセクションから始まり、図を多用して波の解説がされています。電波は電磁波だから回折する、ビル陰は日向より暗いけど真っ暗じゃないっしょ?あれは電磁波が回折しているからだよ。電波もこういう場所では回り込んで存在してるんだよ、という解説を読んでなるほど!そうか!と感心しました。

他にも電波はあちこち飛んでるから反射したり回折したりして干渉しあい、打ち消し合って受信しにくくなることがある、でもその干渉を工夫して強め合うようにしてやれば感度を2倍にすることができるんだぜ!という解説も目からうろこでした。

トラブルシューティング対応は頭が痛くなる

もうひとつ気合が入っているのは、トラブルシューティングについてです。テクニカルアシスタンスセンターというのは障害対応の部門なので、日常どのように障害対応をしているのか、についてなんと1章が割かれています。

例えばクライアントが「インターネットに接続できない!」と文句を言ってきた場合、考えられるのは次のような場合があるそうです。

・インターネット側に異常がある

・ルータがPPPoEのセッションを確立できていない

・PCがルータからIPアドレスを確立できていない

・PCがルータからDNSサーバーのIPアドレスを取得できていない

・NATが機能してない

・ルータがトラフィックを転送できていない(ルータが処理過剰)

・ブラウザの設定が間違っている

これらのどれに該当するのか原因を切り分け、「問題を正確に把握する」ことが第一に要求されます。私が日頃行っているデバッグとやっていることは本質的に変わりませんね。問題がなんだか分からなかったのでとりあえずルータを再起動したら事態が悪化し問題が複雑になった、などの例も書かれており頭が痛くなります。

現場で学べ

解説が用語を並べるだけだったり表面をなぞるだけの箇所も多く、本書ではエンジニアに必要不可欠な知識を学ぶためには不十分です。「知ってるだけでは役に立たん。実地で苦労して学ぶのが近道」と身もフタもない記述もあります。でも実際その通りだと思います。現地でどんな面倒なことが起こるかなんて1冊の本に書ききれるものではありません。これはネットワークエンジニア、プログラマー、など土木的な性格の強いIT業種全般に言えることなのではないかと思います。いやもっと広げて、どんな職業にでも言えることではないでしょうか。

 

 

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