六帖のかたすみ

DVを受けていた男性。家を脱出して二周目の人生を生きています。自閉症スペクトラム(受動型)です。http://rokujo.org/ に引っ越しました。

何がわからないのかわからない

弁護士と警察に相談したことで、元妻に受けた精神的な支配を克服することはできた。しかし、11年間の間に反復した習慣が取れなくて困っている。

返事はハイでしょ - 六帖のかたすみ

元妻に1秒以内に返事をしなければいけないと怒られる、というプレッシャーは、意味が分かっていなくても返事をする習慣を作った。例えば外で店員さんが言っていることが分からなくても、つい「わかりました」と返事をしてしまう。一緒にいた人に「店員さんはなんて言っていたの?」と聞かれても答えられない。

これに加えて、元妻の言うことに疑問を持って否定してはならない圧力が、「わかっていなくてもわかったつもりになる」習慣を作った。元妻には「分からないことがあるのになぜ質問しないのか」とよく怒られたが、それは質問の答えが文脈的に明らか(と元妻が考えるとき)に「その質問が出てくるのはおかしい」と何十回も激怒されたからだ。

習慣はおそろしい。熟練した習慣は無意識的どころか肉体の反射と同じ速さでバッチ処理される。長い時間をかけて沁み込んだ塗料をどうやって取っていけばいいのかわからない。

わからないことをわからないと言える人間がうらやましい。ぼくはわからないことが怖いから、何がわからないのかわかりにくい。

わからないことがAなのかBなのかCなのか、即座に把握する能力がほしい。他人と会話していて、わかったつもりになっている自己を認識することが時々ある。

質問することを怖れていたから、質問ができなくなった。

もう怖れる必要なんかない。

もう怖れる必要なんかない。

何度も唱えていたら、質問できるようになるのかな。

返事はハイでしょ

ぼくは生活の中でよく失敗をして、元妻に怒られた。怒るだけならいいのだが、元妻は人格攻撃も同時に行う。元妻は「人格を否定しているのではなくて、起きたことにそれ自体対して怒っている」と言っていたが、嘘だ。

ぼくが間違いを指摘して「それは違う」と言うと、元妻は「言い方がきつい」と怒った後、「トーダイ野郎は他人を見下す」と付け足した。元家族の家ではぼくは東大中退であることで驕っている、えらそう、ということになっていたからだ。中退なのに。東大なんか入ってごめんなさい。勉強していてごめんなさい。今でもぼくは東大への評価を低く見積もるバイアスをかけている。

人の気持ちが読めなかったときは、元妻に「××人は他人の気持ちを踏みにじるもんな!」と毎回言われた。××にはぼくの地元の名前が入る。これは元妻とぼくの親の仲が悪かったためだ。ぼくの親のことは家では「××人」と呼ばれていて、ぼくも××人と呼ばれていた。元家族の家では僕が生まれ育った地域も土地も忌み嫌われていた。これも尾を引いていて、ぼくが他人に地元のことを話す時にはマイナスイメージしか語ることができず「ここが美しい」「こんないい所がある」と紹介することができない。

誰だって怒られるたびに人格否定されたら耐えられない。言い返すための論理的思考、ニュートラルな気持ちも備わっていない。気分が地底まで落ちていくのを防ぐために、ぼくはまず、怒られそうになったら言い訳することにした。

例えばぼくの返事が遅いと怒られた。おおむね1秒以上間が空くと怒られる。ぼくは「2つのことを同時に考えていたら時間がかかった」「扇風機に気を取られていた」「◇◇という言葉は意味1と意味2の2通りが考えられるから、どちらかわからなくなって時間がかかった」などと言い訳をした。元妻には「◇◇は状況的に意味1に決まっているじゃないか、意味2を思いつくのはおかしい、さぼっている」などと否定された。

うっかり言い訳とみなされる言葉を発すると「また言い訳したな!」という言葉と共に堰が切られ、直接関係のない「××人」などの罵倒語を次々に浴びせられた。

ぼくは真面目に理由を説明しているつもりだった。しかし、何十回も何百回も「言い訳するな!」と言われ続けたため、ぼくが言い返す行為はすべて言い訳であると認識するようになった。

元妻は「返事はハイでしょ!」と言い、ハイ以外の返事を許さなかった。相手を怒らせたとき、怒らせそうになった時に反射的にハイと言ってしまう癖は今でも抜けていない。

これ調教だよね?

窃盗が成立しなかった

rokujo.hatenadiary.com

 

窃盗の件で被害届を出しに警察署に向かった。警察署に行くのは中学生時代に自転車事故を起こしたとき以来で約20年ぶり、自ら被害を訴えに行くのは初めてのことだった。

捜査第三課の窓口を訪れ、警官さんに、離婚した妻にクレジットカードで50万円のキャッシングと3万円のショッピングをされたと訴えた。

警官さんは窃盗または詐欺が成り立つのではないかと考えて、時間をかけて調べてくれた。約30分後、警察署では残念ながら力になれないとおっしゃった。

理由は次の通りだ。ぼくが使っていたカードは楽天カードで、本人カード(ぼく名義のカード)を親カードとして、家族カードというものを発行できる。家族カードは本人カードとは別の番号が付与され、単体のカードとして使うことができる。

card.rakuten.co.jp

当時はたしか3000ポイント無料プレゼントキャンペーンが開催されていたので、ポイントにつられて契約してしまったと記憶している。

家族カードの請求先は本人カードの請求先と等しい。楽天で見られるカード使用履歴は本人・家族両方の履歴が一緒に記載されているし、利用限度額についても2枚のカードの使用額を合算した金額で判断される。一見、家族カードは本人カードの2枚目のようなものに思える。

しかし家族カードは、本人カードのコピーと1点だけ本質的に異なる点がある。家族カードは名義人の真正のカードとして利用できる

以上を踏まえると、まず窃盗については、ぼく名義のカード(=本人カード)が盗まれたのではないから成立しない。ぼくは本人カードを持っていた。

警察官さんは詐欺の線でも調べてくれていた。ぼくのクレジットカードが盗まれたものでなくても、他人がぼくのカードを勝手に使えば詐欺罪が成立する。ところが元妻が使った家族カードの名義人は元妻だから、ぼくを偽装してカードを使ったのではない。よって詐欺罪も成立しなかった。実質ぼくのカード同然なのにね!これが本人カードを無断で使用していたのであれば、無事、詐欺が成立していた。

www.rakuten-card.co.jp

※お申し込み対象:生計を同一にする配偶者、親、子ども(18歳以上、高校生を除く)に限ります。

離婚した瞬間に家族カードの条件を満たさなくなるのだから解約するべきだった。

家族カードなんて契約してはいけない。プロキシサーバと仕組みは同じだ。家族カードはカード名義人の偽装に等しい。ポイントにつられて尻尾を振ったらおしまい。作ってしまった人は紛失を装ってでもいいから速やかに凍結した方がいい。

 

警察官さんは「力になれず申し訳ない」と心からおわびしてくれた。

ぼくはさらに自分の事情も話した。精神的DVを受けていたこと、名前を奪われ通称で呼ばれていたこと、体重が40kgまで減ったこと、こども達が自覚のない軟禁状態であること。DVに理解のある警察官さんで「つらい思いをされたのですね」と話してくださった。こども達のことを大変心配していて、元家族が住んでいる土地の役所や警察に相談してみるとよいとおっしゃった。

警察官さんには民事で損害賠償請求をしてはどうかと勧められたが、既に相談済みで弁護士に受任してもらえる見込みが薄いこと、裁判になっても元妻に職も財産もないので回収が不可能であることを告げた。「そうですか、でも今後××さん(元妻の名前)と交渉したときにトラブルになれば我々が出ていくことができますので、すぐに110番してくださいね」とおっしゃった。

窃盗が認められなくてがっかりしたけど、不安になることもなくぼく自身で全部説明できたので、もう一つ山を越えられた。

元妻は窃盗・詐欺が成立しないとわかっていて家族カードを使ったわけではなく、「自分の名前のカードだからいいだろ!」くらいの気持ちだったんだと思う。

内容証明を送るとか元妻の親に事実を話して金を返すよう促すとか、打撃を与える方法はまだいくつか残っているのだけれど、今はもう元妻に時間やお金といったリソースを取られることがあほらしい気持ちだ。

ばーかばーか!おならぷー!

 

念のため、手持ちの銀行口座も全部解約して新しい口座を作る。通帳とカードはぼくが持っているけれど、銀行印が元家族の手の内にあるからだ。銀行印は新しく作り直した。僕の戸籍上の苗字は元妻と同じものになっているので、苗字ではなく名前を彫ってもらった。もう名前が奪われることはない。

元妻の窃盗

4月20日にamazonで買い物をしたら、4月21日の朝に「クレジットカードの利用承認が得られませんでした」というメールがamazonから届いていた。

おかしいと思いクレジットカードの明細を見ると、限度額いっぱいまで身に覚えのないキャッシングとショッピングの履歴があった。

家を出るときに置いてきた、家族カードを使われた。キャッシングされた金額は50万円。ショッピングが約3万円。

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4月11日に元家族に「養育費を振り込みたいので、口座番号を教えてください」という内容のメールを送ってから何も返信が返ってこなかったので、ここ数日は、引っ越してネットも使えず苦しい生活をしているのではないか、行き違いになって養育費のメールが届いてなかったんじゃないか、などと心配していた。

心配して損した!!!!

なにこれ!!!!ぼくはキャッシングのできる便利なATMなのね!!!!!!

しかもショッピングってamazonだからたぶん昔からほしがってた本とかだよ!?最後の279円なんか「この際欲しいものギリギリまで買えるだけ買っちゃおうぜー」っていう気持ちが見えるよ??なんだよこの数週間今まで通りの生活送ってたの???

バカを見た!!!!!馬鹿!!!!!

 

以前から、恋人にカードを解約することを勧められていた。ぼくは、元妻はプライドが高いからぼくの名義のカードを使うなどという屈辱的なことをしないだろうと思っていた。クレジットカードが使えなくなることの手間も惜しんでいた。甘かった。もっと早く聞き入れるべきだった。

恋人の提案で、21日のうちにすぐ元家族の住んでいる土地の弁護士事務所に向かい、窃盗による損害賠償請求の法律相談をした。DVを受けていたことについても話した。担当の弁護士さんはよく話を聞いてくれて、この件は上司に相談してみる、却下されたとしても力になれる別の弁護士を紹介する、と言ってくれた。

ぼくは話すのが得意ではない。何が重要で、何が重要ではないのかが即座にわからない。一度話を始めると話が独り歩きして、些末なことをいつまでも喋っていることがある。ぼくには誰がいつ何をどうした、という話の基本が身についていない。

ぼくが弁護士さんに話をするとき、足りない言葉を恋人がたくさん補ってくれた。時にはぼくよりも多くを語ってくれたけれど、ぼくが主体的に語るという形式を崩さないようにしてくれた。恋人は体調が悪いのを押して付き添ってくれた。いくら感謝してもしきれない。

弁護士さんの話では、DVが裁判所に認められないかもしれないし、仮に裁判で勝ったとしても元家族には財産がないので金を回収できる見込みがなくあまり薦められない、と言ってくれた。裁判するかどうかは、感情の上だけの問題となる。21日のうちは、それでも裁判することに意味があると思っていた。

22日になり、気持ちを整理して利点と欠点を列挙した。利点は、元妻にダメージを与えられることと、ぼくが元妻を心理的に乗り越えられるイベントになるであろうこと。欠点は、50万円~100万円のお金と、裁判所までの片道2時間半の時間と交通費がかかること。元妻に会うことで精神状態が悪化する恐れがあること。

1つ目の利点については、弁護士さんに内容証明を出してもらったり、窃盗で警察に被害届を出して調査が入れば十分なダメージになるので代替できてしまう。2つ目の利点については、元妻が最悪の手段を使ったので「ぼくが悪いのではないか」と考える気持ちは無くなったし、21日に弁護士さんに相談したことでぼくがすでに心理的に一山超えてしまったので、意味が失われてしまった。おまけに詐取されたお金はリボ払いだから50万円がいきなり吹っ飛ぶわけでもないし、「養育費の前払い」とみなして1年程度養育費の支払いを止めれば、回収できる。

欠点は目立つ。100万円をドブに捨てるくらいなら自分の好きに使った方がいい。時間がかかれば恋人と過ごす時間が少なくなる。仕事ができない時間が増えて収入が減る。元妻にももう会いたくない。

ばからしくなった。裁判はやめて、少額で嫌がらせを行うにとどめよう。

元妻が窃盗したことは残念だったけれど、結果的には気持ちが軽くなったし、DVで受けた傷や認知の歪みは早くもフェードアウトしていきそうだ。

物事がいい方向に転がっている。

恋人に長い時間をかけてお返しをしなければいけない。ありがとう。

勉強をするなと言われて

元妻には学歴コンプレックスがあった。

ぼくは元妻と出会ったとき、トーダイ生だった。組み合わせが初めから間違っていた。

トーダイ生と聞くと誰でも怖気づく。一言一言に深淵な意味があると思ってしまうらしい。しかしぼくの経験上、トーダイ生は半分以上が発達障害だ。能力に偏りがあって、たまたま勉強ができただけの人間が多い。ぼくもその例にもれず、勉強はできたがその他の能力は極端に低かった。特に言語性の能力は、今までどうやって生きていたのか不思議なくらいのレベルだった。元妻が、ぼくがあほだとわかるまでは数年かかった。あほだとわかった後には逆襲が始まった。

何につけても「勉強は本気になるくせに他のことは本気にならない」となじられた。そんなことはない。何に対しても本気でやっていた。移ろいゆくものや紙に記述されていないものは、覚えられない。口で説明されても流れて行って忘れてしまう。

ぼくはぼくで日々破壊されていく自尊心を保つために、唯一得意だった勉強を続けることが命をつなぐ手段だった。

弁理士試験を中断させられたことは以前にも書いた。

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試験を中断させられた後は、隠れて語学学習をしていた。語学は毎日続けると絶対に効果の出るスポーツのようなものなので、好きだった。NHKラジオ講座を家族が寝た後に聞いていた。ある日テキストが元妻に見つかった。その日は家族全員でコンサートに行く日だった。元妻は激怒し、ぼくは罰として一人家に残された。10時間ほど1人で過ごした。何もする気にならないので、10時間の間ほとんど寝ていた。みなが帰っていた時も寝ていたので、とがめられた。

「表立ってやるならともかくこそこそ勉強していたのが許せない」

と言われたが、表立ってやれるわけがない。

家にある本を読むと嫌がられた。読むと「その本はよくない」などと嫌味を言われ、次の日読むのをやめたら何も言われなくなった。こどもの本を読んでいたら長女が密告して禁じられたこともあった。

家を出るまでの最後の1年半は、物置兼ペット部屋兼の六畳間をあてがわれ、そのかたすみで一日中仕事をしていた。なぜか仕事場には誰も入ってはいけないという決まりになっていたため、ネットで様々な記事を読んでも、PC上で学習していても、まったく気が付かれなかったことが救いになった。

禁じられていた語学学習は押し込められたものが爆発して次から次へと手を出し、最大で6か国語同時に学習していた。 

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日常でどんなに傷つけられても、学習している間は毎日確実に成長できるのが楽しくて楽しくて。

一度頭が乾くと、再び潤すための力は無限に大きくなる。

 

語学学習は自尊心を保つための糸としての役割を終えたのか、もう1か月以上何もしていない。

いまは勉強を禁じられることがない。それどころか推奨される。なんて自由なんだろう。

たくさん勉強したい。この世界をもっと知りたい。

私の方がうまくできるのだから

ぼくが家事をやらせてもらえなかった理由は元妻のゆがんだ完璧主義によるものでした。

洗濯物を干す順番と方向、裏返す時間、取り込む時間、畳み方、タオルを重ねる順番などなど一々すべてに注文がありました。ぼくは細かい手順を覚えるのが苦手で、しかも毎日やり方が変わるのでついていけませんでした。間違っているとイライラされ、「頼まなければよかった」「頼んだのが間違いだった」「自分でやればよかった」と言われ、教えるのも面倒ということで仕事を取り上げられました。

いまは家事ができて幸せです。

元妻の口癖は「同じことを父の前でやったら殺されている」でした。

元妻の父(ぼくから見て元義父)は何か気に入らないことがあるとすぐに殴る人間だったそうです。元妻は殴られないようにするために論理武装や弁舌、巧妙な嘘をつくことを覚え、元義父を言い負かすことができるようになりましたが、そのために元義父の脅威となり、さらに殴られました。

元義父は社会的には優れた人だったらしく、親類や会社の人間の世話をよくしていたそうです。元義父の言葉には元妻の人生観に影響を与えたものが大きかったらしく、元妻が元義父について話すときはいつも愛情と憎悪と恐怖がミックスされたものが伝わってきました。

元義父は几帳面で完璧主義で強迫症気味で、顔を洗いすぎて眉毛がなくなるほどだったそうです。ぼくはたぶん、彼と同じものを求められたのではないかと思います。何事につけても元義父と比べられました。でも19歳年下のスペクトラム星人にそれを求めるのは酷です。

ぼくが家事をうまくできなかった理由を伝えると「言い訳をするな」と頻繁に言われていたことを今思い出しました。いかなる理由を述べてもぼくが悪者になりました。具体的にどう言い訳したのか覚えていないので、ぼくと元妻とどちらが正当なのか判断することはできません。今よりも遥かに言葉に不自由していたので、子供の言い訳のようなものだったと想像します。全力で正当化していたことは覚えています。言葉で叩き伏せられるのが怖いから正当化しないと死ぬ、と思っていたことだけ覚えています。

「私の方がうまくできるのだから、あなたは言うことを聞いていればいい」

「口答えをするな」

「今口答えしたな」

少しずついままでに言われたことを思い出してきました。家を出て数か月間、頭の安全装置のせいで封じられていたものが漏れてきています。思い出せる限り書き続けていきます。