書籍レビュー: 信用創造ってなんだ 『金融入門』 著: 岩田規久男
★★★★★
岩田規久男さんは経済学者。現在(2015年)、日銀副総裁です。任期は2018年まで。
副総裁:岩田規久男(いわたきくお) :日本銀行 Bank of Japan
本書は貨幣とは何か、というところから始まります。銀行の役割、金融とは何かの解説とその必要性、金利や金融市場とは何か、などなどを経て最終的にはマクロ経済学と金融政策にまで至ってしまう非常に射程の広い本です。専門用語のオンパレードですが繰り返しも多く、付いていくための工夫もされています。欲をいうならもっと図やグラフが多ければさらに分かりやすいのですが、ページ数の都合を考えると仕方ないでしょう。
金融ってなんですか
読んで字のごとく「金の融通」です。Aさんはお金が足りないが、Bさんはお金が余っている。Aさんは1か月後に金が入る当てがあるが、今すぐお金が入るわけではない。Bさんは金が余っているが、1か月寝かしておくのも勿体ない。そこでBさんはAさんに金を貸して、Aさんが1か月後返す時に一定の利子を取って儲けたい。
しかしAさんは本当に金を返してくれるのかどうか信用できない。夜逃げされたらおしまいだ。でもAさんの収入状況を調べるのはとても手間がかかる。Aさんからしてみても、Bさんがどんな人かわからないし暴利を要求されるかもしれない。支払いが遅れるとスマキにされて東京湾に沈められるかもしれない。
そこで登場するのが、銀行をはじめとする専門の金融機関です。調査のプロフェッショナルにより調査コストを抑え、AさんとBさんのような顧客を多数抱えてマッチングさせ、仲介料を取る仕事、それが金融だということが序盤で説明されています。この方式ならAさんは金を借りる機会が増え、Bさんは安全に資産を運用でき、銀行は仲介で儲けられる。3者が得するという関係になります。
銀行は貨幣を創造する
私全く分かってなかったんですが、銀行が会社に融資する時って、銀行が貨幣を文字通り「創造」するんですね。金を借りたい企業が銀行に行って融資を頼み、審査が終わると次のようになります。
…銀行が企業Aに100万円貸し出すとしてみよう。銀行はこの貸し出しを、企業Aに預金口座を開設させ、その預金口座に100万円だけ入金することによって実行する。この企業Aへの預金口座の入金は、単に、企業Aの預金口座に100万円と印字するだけであり、銀行は1円の現金も必要としない。
えー!!!知らなかった!!!てっきり、銀行は顧客が預けた金全額がプールされていて、そこにある金額を上限として貸し出せるんだと思ってました!
信用の力で金が生まれる
もう少し読み進めていくと謎が解けました。銀行には顧客の預金全額が常に存在するわけではありません。顧客の数が多ければ、顧客が預けている金の何%かを持っていさえすれば日常の引き出しには十分応じることができますので、銀行にある現金は少ない量でよいのです。残りは貸してしまって利子をつけ儲けることができます。なので、上記のような「突然預金が100万円増えた」なんてことをしてしまっても、顧客が日常使用する金額さえ銀行内に存在すれば業務が十分成り立つわけです。こうして銀行は貨幣を創造し、利潤を極限まで高めます。この創造機能が信用です。そこに存在しない金をあたかも存在するように変える、「ない」を「ある」に変換する機能が信用だと言えます。
「あの銀行はやばい」という噂が流れるとこの信用が崩れ、顧客が預金を引き出しまくると銀行は潰れます。顧客が預けているお金全部が銀行にあるわけではないからです。信用は現物を遥かに超える量のお金を生み出しますが、前提が崩れると何もかも無くなります。危ういですね。
他にも、今私が金を借りている消費者金融、すなわちノンバンクは何故~銀行系列って言うのかなと思ってましたが、それはノンバンクが必ず銀行に金を借りて営業しているから、でした。ですのでノンバンクは金の又貸しです。親玉の銀行に利子を払わなければいけませんので、金利が高いのは当たり前というわけです。
基本的なことで知らないことだらけだったので、非常に良い本でした。1999年に発行された本ですが古さが気になりません。90年代ですからバブル崩壊はストック過剰の調整だった、などの考察も載っています。おすすめの1冊です。岩田さんが今の国債や手形を買いまくる量的緩和をどう思っているか、知りたいものです。
関連書籍
わかりやすかったので、次はこれを読んでみようと思います。
推進派でしたか。
これも面白そうですね。
金融と言えばこれ。以前立ち読みしたことがありますが、この本を読んでからにすればよかったと後悔しています。またゆっくり読みたい。
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