六帖のかたすみ

DVを受けていた男性。家を脱出して二周目の人生を生きています。自閉症スペクトラム(受動型)です。http://rokujo.org/ に引っ越しました。

NHK 君が僕の息子について教えてくれたこと

君が僕の息子について教えてくれたことを見た。自分は自閉症スペクトラムである、という医師の診断を受けているので、当事者という立場として見ることとなった。
東田さんはせつなすぎる。思考がまともにできるのに言語と思考が結びついていないらしく、考えを言葉で表現するのが難しい。よい言葉を思いついても、すぐに消えてしまう。文字盤を通してしか会話できず、でも言葉になる以前のものを大量に持っているらしく、表現するのが難しいだけでしかるべき手段さえあれば豊かで美しい文書を量産することもできるのだ。2時間で800字程度と、速度が遅い制限は付くけれど、それで十分だ。
彼の発声は、自動読み上げの音声と一致していると思われる。自閉症患者は経験を自分流にアレンジしてフィードバックすることが難しい。完璧なコピーはできる。したがって発声が難しいならコピーするしかないのだ。彼は自分のことを「思考の点と点が繋がって線にならない」と表現している。ここらへんの記述は自分の経験と合致しすぎていて、芯をついてなおかつやさしく美しい言葉が並びすぎていて私は家族に隠れて号泣してしまった。が、よくよく考えると、それは嘘だ。嘘というか、言葉足らずなのだ。彼は言葉と言葉が繋がらない、つなげにくいことを表現しているのであって、彼の頭の中では本当は思考が繋がっている。繋がって面や立体になっている。だって文章が完璧なのだもの。私が書く文章は、私が把握している限り、発散していて矛盾も多いと思われる。なぜなら、全体の構造を考えながら作ることができないからだ。彼は「持っている者」の側の人間だ。
と思ったが、彼の言語表現は非常にスローだ。スローなら、頭の中で何度もループが発生する余地がある。全体を考えざるを得ない。全体を考えないとそもそも言葉が発生してこないのかもしれない。それは非常に疲れることだろう。事実、彼は毎回会話を終わるための「終わり」というボタンを押して「終わり〜!」と叫んだあと、呼吸を荒くしながらすぐどこかに立ち去ってしまうのだ。ということは、「持っている」ように見えるのは、彼の努力の賜物であったとみるべきであろう。我慢強く、辛抱強く、途中で投げ出さないで、それでも伝えたいことがあって、並々ならぬエネルギーをかけてその結晶である小さな言葉を発し、積み重なってやっと一つの本ができた、と考えられる。雨垂れ石を穿つ。
翻訳者のデイヴィッド・ミッチェルさんはとても誠実で悩む姿が好感の持てる方だったけれど、アメリカのブライアンさんの親は具体的なこと何もしゃべらないし偽善的な感じがする、ブライアンさんは知的な遅れがあるように見えるから家族がいい顔をすれば騙されるよなあ、自分も経験あるし、と思っていたら、東田さんがアメリカで講演会をする話が始まった。これはひどすぎる。紙に書いた原稿を東田さんが読むのだがまともに発音できず単語は飛ばすし文章の体を全然なしてない。しかし会場には彼が読む原稿の要約が英文で配られていてそれがスクリーンに映し出されている。じゃあ彼が読む意味あるのか?それに何故彼に通常の速度で読ませるのか。デイヴィッドさんがそうしたように、ゆっくり1語10秒の速度で行きつ戻りつ読んでもらうのが本来だろ!?何もわかってねぇ!彼にはストレスでしかないよ!それを聞いて喜んでる参加者って何なの?飛行機で十数時間拘束してこの仕打ちかよ!ふざけんじゃねえよ!元気をもらいました、息子のことがわかりました、とか自己満足してるんじゃないよ親どもめ!東田さんはいい人だからあんたらの役に立ちたいと思って頑張ってきたんだろうけど企画そのものがおかしいよ!と家族に内緒で怒りながら見ていた。理解されないだろうし。
でも、自由の女神像見られてよかったね、東田さん。

8/19追記 ※要約は配られていなかったそうです。ごめんなさい。